高齢者の入浴事故を防ぐための安全な入浴のポイント

近畿圏で行った入浴に関するアンケート調査 (19-34歳の男女200名を対象) で、70%以上の人が1年を通して毎日お風呂に入ると回答していることから、われわれにとって入浴は日常の生活行為の一つとなっていることがわかります。しかし、日本は急速な高齢化が進み、高齢者の事故災害死亡率では住宅内の事故によるものがここ10年間に急激に増え、特に冬季の浴室での事故死が指摘されています。

そこで、今回のブログでは、高齢者の入浴事故を防ぐための安全な入浴のポイントについて、実験結果をもとに解説していきます。

  1. 入浴時・出浴時の血圧変化に注意する

入浴に伴う身体的変化を調査した結果、入湯時と出湯時に血圧が大きく変化することがわかりました。特に、出湯時の血圧低下が大きく、急激に立ち上がると危険であることが示されました。そのため、高齢者の入浴時にはゆっくりと動作することで血圧低下を改善することが重要です。

  1. 脱衣室の温度管理が重要

冬季に多く発生する高齢者の入浴中の心肺停止を防ぐためには、脱衣所の保温に注意することが重要です。脱衣場での血圧は居間や浴室内よりも高い傾向にあるため、適切な温度管理が必要です。

  1. 適正な湯温での入浴を心掛ける

入浴習慣と血圧変動の調査では、42℃以上の熱い湯に浸かる場合や湯に浸かる前に体を洗う場合の方が浴槽内での血圧低下の度合いが大きかったことがわかりました。そのため、適正な湯温での入浴を心掛けることが、急激な血圧変動を防ぐ上で重要です。

  1. 複数での入浴や家族による声かけが有効

高齢者の入浴中の心肺停止は、冬季や自宅での発生が多く、家族との同居形態であることが多いことが分かっています。そのため、複数での入浴や家族による頻繁な声かけが、事故の早期発見につながると考えられます。

  1. 入浴環境の整備および入浴方法の啓発が重要

老年者の入浴に際しては、急激な血圧の変動を来さないような入浴環境の整備および入浴方法の啓発が重要です。自治体や地域の支援団体と連携し、安全な入浴方法や環境整備に関する情報を広めることが求められます。

  1. 入浴補助具の活用

高齢者の安全な入浴をサポートするために、入浴補助具の活用が有効です。例えば、滑り止めのマットや手すり、シャワーチェアなどを使用することで、転倒や滑りによる事故を防ぐことができます。また、体調に合わせて、湯船に浸からずにシャワーだけを使用することも、安全性を高める一つの方法です。

  1. 体調管理と適切な入浴タイミング

高齢者の入浴中の事故を防ぐためには、適切な入浴タイミングの選択が重要です。具体的には、食後すぐや疲れている時など、体調が不安定な時は入浴を避けることが望ましいです。また、入浴前に十分な休憩時間を確保し、体調を整えることも大切です。

  1. 定期的な健康チェックと相談

高齢者が安全に入浴を楽しむためには、定期的な健康チェックが必要です。医師や看護師と相談し、適切な入浴方法や注意点について確認することが大切です。また、体調に変化があった場合には、速やかに専門家に相談することが重要です。

  1. ケアプランの作成と家族や介護者との連携

高齢者の入浴事故を防ぐためには、家族や介護者との連携が大切です。ケアプランを作成し、高齢者の状況に応じた入浴方法や安全対策を共有しましょう。また、家族や介護者が定期的に状況を確認し、適切なケアを行うことが重要です。

これらのポイントを踏まえた安全な入浴方法や環境整備に取り組むことで、高齢者の入浴事故を防ぐことが期待できます。家族や地域社会全体が連携し、高齢者の安全な入浴環境を実現しましょう。それぞれの対策が、高齢者の健康で快適な入浴生活に繋がります。

  1. 高齢者向け入浴施設の利用

高齢者にとって、安全で快適な入浴環境が整った施設の利用も一つの選択肢です。デイサービスや介護施設などでは、専門スタッフが高齢者の安全を確保しながら入浴サポートを行っています。家族や地域社会が連携して、高齢者に適切な入浴施設を紹介しましょう。

  1. 地域に根ざした支援活動の展開

地域内で高齢者向けの入浴支援活動を展開することも、安全な入浴環境を実現する方法です。自治体や地域のボランティア団体が、高齢者の入浴方法や環境整備に関する情報提供や相談窓口を設けることで、事故の予防に繋がります。

  1. 高齢者への情報提供と啓発活動

高齢者自身が安全な入浴方法を理解し実践することが、事故を防ぐ上で最も重要です。テレビや新聞、インターネットなどを通じて、安全な入浴方法や注意点についての情報を提供し、啓発活動を行いましょう。

まとめ

日本の高齢化が進む中、高齢者の入浴中の事故が増加していることから、安全な入浴の方法や環境整備が急務です。入浴時の血圧変化に注意し、適切な湯温での入浴を心掛けることが重要です。また、脱衣所の保温や複数での入浴、家族による声かけなどの工夫で、事故の予防や早期発見につながることが期待できます。

高齢者だけでなく、家族や地域社会全体が一丸となって、安全な入浴環境を整備し、入浴方法の啓発を行うことで、高齢者の入浴事故を減らすことができるでしょう。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjppp1983/18/3/18_205/_article/-char/ja/
高齢者の入浴中突然死に関する調査研究 (jst.go.jp)

コメント

タイトルとURLをコピーしました